紋黄蝶/mott
 
誰とでも寝てしまうのには理由があって、
彼女のおなかには蛙が棲んでいた。
蛙にも理由があって、
彼女のおなかに、紋黄蝶を獲りに行った帰りみち、
たまたま彼女の恋人のキスをもらってしまったので、
最初は恋人の希望もあって、
彼女のおなかに棲むことに決めたのだった。

キスがしたい。
と蛙はたまに彼女にもらした。
彼女と蛙はほんの少しだけ想いあっていたけれど、
「残念だけど、あなたにキスをすることはできないわ」。
なるほど確かに蛙と彼女がキスをすることは物理的にも難しそうだった。
「今日は甘いキスができるわ」
確かに。愛されてるみたい。
「ごめん。今日はねちっこかったよね
[次のページ]
戻る   Point(2)