泣き腫らした家/泣くまでの経緯/豊島ケイトウ
な夕日は――
その家にある一等の財産だ
「泣くまでの経緯」
思い返してみれば
鬱蒼とした祈りの世界から
ようやく一人で生まれたのだ
しかしなんだ
この体たらくときたら
目も当てられぬ
あるいは
教育がいけなかったのか
孤独のてにをはを知らぬ者が
胡坐をかいたまま示した
この国の教育
昨夜テレビを見ていたら
しかめっ面の政治評論家が
実は猛禽類に育てられたのだ
などと――
いかにも誇らしそうだった
一夜漬けで築いた人垣を
ベルリンの壁とうそぶくところに
僕はおそるおそるうずくまって
生まれてはじめて静かに泣いた
長い長い夜が明けるまで
戻る 編 削 Point(14)