そして冬/瀬崎 虎彦
 
 うれしいことも、うれしくないことも一緒くたにして、あなたは僕を困らせる。
 ラベンダーの香りのする部屋で、コウイチがそういった。その香りは彼の部屋を訪れたほかの女の香水の香り。これはわたしの男ですよ、と強く主張していた。だからあたしはさらに困り果てる。コウイチが困るので、あたしが困るのだ。
 未練を水に溶いたら、たぶんそのような色彩になるだろう、という薄い水色がマンションの八階の小さな窓から覗いている。ここが世界の果てだといっても誰も信じない。ただその色彩を除いては。けれど暗い雲が窓枠の端からもくもくとわいてきて、次第に全てを埋め尽くしてしまう。傘を持ってきてよかった。どうせタクシーに乗るん
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