異子。亜子。/手乗川文鳥
 

あなたの靴底に踏みつぶされても良いです
わたしの破片がソールにくっついています
なんども地面に擦りつけて、または擦りつけながら歩いて、
わたしの窪んだ細胞を、どこか遠くへ連れて行って、
そしてわたしがわたしでなくなっても、あなたはまた新しいわたしを見つけて、
そしてひらりとすりぬけて、
わたしは一斉に震えるでしょう、
空白が、行間が、睡眠が、暗闇が、重力が、
フルフルフルフル。





小さな虫が浜辺に浮いている
緑色に光っている/(それ以上、行ってはいけない)
わたしは「夜光虫」、と言って、あなたは虫を手に取って、
光るのをやめた虫が死んでしまいそうでそれであなたは海に戻して、
そっ、と、/(伝わらなかった振動。波間から月明かりが人の顔をしてこちらを見ている。)
そのようにわたしに触れてくれれば良かったのだと
虫に嫉妬したときからわたしは
名前のない虫に分類されたのです




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