審判/寒雪
夏の名残が残していった
焼け付いた風の香りが
鼻の奥からいなくなっていく頃
確かに消えてしまった人たちを
口から生み出す棘で
返す返す突き刺し続ける
酷薄な笑いのシルエット
始まりの鐘が鳴り響いた時刻
日記を紐解いても記されてはいない
ただ悲しい悲鳴をあげる静脈の匂いに
色とりどりの興奮が交錯して沸騰する
終わることのない血祭り
そこで捧げられる生贄の血は
気付かないだけで
本当は祭司達の穢れた血潮
月日が流れて
まだそこに月があるなら
その丸さを凝視してみる
あの時あの場所あの状況での
自らの行為を刹那
月は冷酷に審判を下す
真っ直ぐに立っていられるかどうか
胸に手を当ててみるといい
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