ある冬の日、寒空/林帯刀
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引っ張られたから
振り返ってみたけど誰もいない
左手は引っ張られたまま
そこから伸びる
糸
からんでいる指の先
坂道
たぐってみた
釣り糸みたいだけど
おかしな色してて
縮んでくから
手の中の長さはそのまま
おかしな色もそのまま
何分か前に通った店の
鉢植えの枝から
生えていた
背の低い木は
冬だから当たり前だけど
春になれば芽がでるんだろうけど
今は糸が生えてるだけ
しゃがみこもうとして糸を
放した
途端
肩先をかすめて伸びる伸びる
ぐんぐんぐんぐん伸びて伸びて
高く高く遠く遠くとおく
逆
光
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