海洋生物/Giton
てことばはひとに還る。
そのとき不意に仮面の言葉が襲う。仮面の言葉は怖いその言葉は仮面だことばなんかじゃないそれは広がらない靡(なび)かないひとをとらえないそれは言葉は仮面で実は人で人が人のままで恐ろしい仮面を向けてひとを威嚇する仮面でひとを脅して従わせひとはことばをうしなう。もしもきみが仮面の言葉に襲われたらじっと後ろを向いてやりすごすほかはない固い甲羅で身を護るほかはない仮面の言葉に身を曝すことはきけんだから…
そしてことばはひとに還る懐(なつ)かしいことばが還ってくるぼくはきみのかえりを待っていたずっとしずかに待っていたひろがっていったことばはいま還ってくるそしてことばがことばを生みだしことばたちが還ってくるときそのことばの網はきみをとらえぼくをとらえことばによってぼくらはとらえられているのだ。
…ことばのあぶくがきみの唇からぼくの唇から浮き上がってゆく
…どこまでもどこまでもゆらゆらゆれながらことばのあぶくが浮き上がってゆく
…遥かの遠くから鈍く射しこんでくる冷たい光のなかを
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