ゆく/山人
に煙と毒を堪能していた。毒が満たされ、そのけむっていた想いを晩秋の夕闇に吐き出した。
午後三時を過ぎると明らかに晩秋は駆け足のように夜を急ぐ。山頂を後にした頃にはすでに足元が少し暗くなっていた。
山頂直下の急登を下ると、緩やかな窪地となり、薮の中のやすらげる場所を決めた。
最後の晩餐だった。
ヘッドランプを取り出して、湯を沸かした。死ぬつもりが生きるための行為をしているようで滑稽だと思い嗤った。
レトルトカレーとインスタントラーメン、おかずは赤貝の缶詰だ。山でひとりでこんなに贅沢したのは初めてで、自分の存在の終焉に乾杯、と高級な缶ビールを木に優しくぶつけた。
これで眠くなれ
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