オリオンの凧/佐倉 潮
始発列車の車窓から見上げる空に
いくつもの星が瞬いている
町も野原もまだ眠りについていて
星明かりはひどく饒舌で ―― あぁでも
下らない言葉ならあんなに知っていたのに
俺が繋げられる星座はたった一つ
オリオンだけ
俺たちが交わしたどんな言葉
よりも、もっともっと星はたくさん
なのにオリオンは一つだけ
だから俺はたった一つのオリオンに
凧糸を括りつけて
高く、高く 飛ばしたい
オリオン
君のいる町まで、オリオン
オリオンの凧を括った
この糸だけでも君に
手渡しにゆく
戻る 編 削 Point(1)