ゆるやかな生活/豊島ケイトウ
焼き。お粥みたいにゆるゆるのご飯。乱切りの野菜にマヨネーズとケチャップをかけただけのサラダ。げんなりとするわたしをよそに、祐輔は平気そうにがっついている。わたしは胸の内でため息をつくしかない。
三カ月前、わたしは二十年間勤めた出版社を、辞めた。同時にわたしは生活を捨てた。その日その日、勝手気ままに過ごすようになった。するとどうだろうか、祐輔が自ら進んで家事をするようになったのだ。とはいっても、料理は失敗の連続だし、洗濯物をベランダから落とすわ、あげくに癇癪を起こして部屋を散らかしてしまうわ――慣れないことにいろいろと悪戦苦闘し、それは現在もつづいている。わたしのかわりに働こうとしているのは判る
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