オンボロアパートの独白/さつき
まっしろなノートを脳内に広げ
インクの切れたペンを端に置く
そしてそうっと目を閉じた僕は
誰かが喋ってくれるのを待つの
僕の中には何人かが住んでいて
僕はオンボロのアパートなんだ
カラスがお月さまを呼ぶ頃には
いろんな話し声が聞こえてきて
うまく聞き取れるものもあれば
外国語のような言葉もあるけど
僕は全部理解できるはずだから
ちゃんと脳内に焼き付けるんだ
辞書も新聞も役には立たないよ
本はちょっと知ったかぶりする
アドバイザーには向いていない
そう言っても知らんぷりしてる
僕の脳内に様々な声が溜まって
引き出しに小分けにしまえる頃
やっと僕はインク切れのペンで
ちょっとスカシタかっこうして
作家とか詩人だとかを気取って
眉間にしわを寄せてみたりして
こうして書き出すわけなんだよ
僕の中の人たちの話した言葉が
僕の外の人たちの聞ける言葉に
なればいいなあなんて思うけど
僕は、うん、よくわかんないや
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