朝刊配り/たもつ
自転車に乗って配りに出かけると郵便受けから
手の出ている家については深爪していないか確認して渡し
一区画先にある家はいつもピンポンを押さないと
新聞を取りに出てこないのでピンポンを押すと決まって奥さんが
トランプを扇子状にして出てくるのは毎朝
未明からババ抜きに興じているからであった
密閉された原動機付自転車の中では大量発生したザリガニが
苦戦を強いられ、何と戦っているのかわからないのに防衛ラインを
下げていて、でも大量に発生しているから原動機付自転車は手で押す
のが最適な部品の塊でしかなく、首輪に抵当権つけられた犬に吠えられ
うっかり道路の真ん中に埋められた地雷を踏んで僕は蛍になる
一匹の蛍になる
そんな毎日
そして置いてきた白紙の便箋が遺書として残る
僕の毎日
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