少年の歌/吉岡ペペロ
 
少年はなにも背負っていなかった

浅黒い肌はつるんとして冷たかった

寝癖でととのえられた黒髪は

賢そうな額を斜めにふちどりしていた

ぷっくりした頬と唇の端の境目には

えくぼのような影ができていた

やさしく垂れた細い眼は

慈しむようでも照れているようでもあった

ちいさくて貴いプライドと

悲しみを抜こうとする脱力で

世界にむけて存在している者が

どうしてなにかを背負っていようか

少年はなにも背負っていなかった
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