創造妊娠/佐藤真夏
 
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創造妊娠   よもやま野原

病院の二階の窓は三つとも開いていて、そこへ飛び込めばはらいたは治るかもしれなかったし痛い思いをさせるたくさんの穴を塞いでくれるかもしれなかった。息をするたびに体の真ん中では風が起こり、涙や赤いもので開け閉めされている器はたまに水に潜るとほっとした。
み、ず、と唇の先で言ってみる。水が、嬉しそうに揺れた。
泡をぱつんぱつんと吐きながら、み、ず、み、ず、と言ってみる。音が、耳の穴から出てきた。
奥の方で眠っていた声が寝坊した朝のように飛び起きて、やわらかい水と一緒に果ての方へと流れていく。は、て、と言ってみる。いつか果てが迎えに来るような気がした。
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