ハード・レインは水のブリット/ホロウ・シカエルボク
 
に駆け寄ってきた
大丈夫ですか、と若い男が言うので
「底に男がいるよ」
「生きてるやつですか?」
「死んでるやつだと思う…エラで息してるわけじゃなければね」
「それなら問題ありません」
いけませんか、というような調子でそんなことを言うので
そいつの手を掴んでプールに放り投げた
「アディオス!」
もがいてるそいつのか細い声を背中に聞きながら
そういや水底にいたヤツもあんな顔してたかもな
と、少し思った
だからなんだというのだ?
トップレスの神官はたるんだ女たちが去ったあとのプール・サイドの椅子に腰かけて
俺が意外とあっさり生還するのを待っていた、その
私にはそんなことは初めからわかっていた、とでも言いたげな表情を見て
ああもう、どこだろうとこいつとしなくちゃいけないんだろうな、と
俺はなりゆきを悟るのだった
庭に居た一対のヒルコは
仰向けで雨に流されていつしか見えなくなった





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