アノ〜チョットいいデスカ?/アラガイs
※
「あの‥突然ですが、ボロクソな恋を綴るこの惨めな男の詩は 改訂を繰り返し ながら継ぎ足されてゆく気配です
予め お断りしておきます 。」
俺がリリーに夢中になったのはもうかれこれ 十年以上は前のことだけど
遠慮がちな片言の日本語で アノ〜チョット いいデスカ ?と、品物をねだるときのお伺いをする彼女のあのわるびれた表情を何故か忘れることはない 。
たかだか千円から二千円くらいの物だが、今になって考えてみれば 貧しい国だの 出稼ぎだの‥ と
同情するほど俺もこの国も余裕があっただけのことで
あの当時は将来という道筋も見つけられず何かにつけて自信を失い、ただ目の前のどぶ板を攫うように悲観的になっていたんだと思う
。
そう 思えば思う程このくだらない中年の薄っぺらな動機からくる片想いの恋が
あのマニラ湾から眺める霞んだ夕焼けのように、すぐに儚く沈んでゆくのは
近所にいる子犬がわんわんと警戒して吠えつくほど目に見えて確かなことだったはずなのに
戻る 編 削 Point(4)