私のかたちに似た木/豊島ケイトウ
明るい心臓の奥深くに
私のかたちに似た木が一本
ひっそりと佇んでいる
その木は、
常緑と呼ぶにはいささか
難解で
落葉と呼ぶにはいささか
陽気である
そしてその木は、
私の目を通して 天体を
私の手を通して 薫風を
私の足を通して 土壌を
生きるために学び続ける
私の地中に張り巡らされた
根は、途絶えることなく
脈々と受け継がれ――
引き伸ばされる
未完成のアルバムである
遠い昔に取り残された
すすり泣く少女の肩を
そっと たたく日まで
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