愚か者への挽歌/寒雪
 


おまえは今
高くそびえる岸壁を背に
なにかがやってくるのを
頼りなげな銃を手に待っている
そよ風がそっと
木の枝にキスする度に漏れる
葉の音に怯えて
意味も無く銃をぶっ放す


今まで
自分が人生で犯してきた罪
数え切れないくらいの我侭
今ごろ
おまえは自分のした事を恐れ
見えない敵が
目の前に現れるのを
膝を震わせながら待っている


無様だ
おまえ以外の人間から見れば
当たり前のことだったのに
それに気付かずに
今更ながらに
言い訳を撒き散らす


覚悟もなく
好きに生きてきたおまえは
いずれ誰かに背中を撃たれるだろう
その時
自分の背負っていた物の重さを
はっきりと感じながら
意識を失わせていくがいい


それがおまえへのレクイエム

戻る   Point(0)