海の見える家から/番田 
 
男の声は人に聞こえない響きで
褐色の空気が いつもあるだけ
暮れ行く夜明け前の時の中で
ただ 流れる 女の影に群青色を見る


一つを手中にしようとする
そこにゆらめく湖に 何一つ無い
一つの色彩を見る
たぶん一つの流れる時に
意識の触れようとする 一つに
そこに 流れる砂粒の 何一つ無い
一つの形状を ぼんやりとただ見ている
情景の一つを


形は 私には見えないものであり
透明な空間があるだけだ
動物は影に模様を見ている
流れる灰の その内側に
見えない 流れる大気は
いつも気流があるだけ
流れる そして 夜明け前の世界で
私は影の息吹を知る

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