表現における公準(要請)と公理/海里
 
もしも彼女が本気で読んだら
作者に何も残らない

一文字余さず味わいつくして
海に溶かしてしまうだろう

始原のことばの海は深くて
作者はしくしく泣くだろう

もしも私が本気で読むなら
まず第一に分類だ

詩にもタイプがあるだろう
昔話にAT(注:Aarne-Thompson type index アールネ=トンプソンによる昔話の分類型。)や、FDL(注:Folktale Description Language 昔話記述言語の一例。)があるように

それから余白を読むだろう
何度も余韻を味わうだろう

読者は作者に寄生はしない
逆は時々あるけれど

詩も送り手に依存はしない
逆は時々あるけれど

 
「色鉛筆のためのパレット」より。

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