流れ/さつき
 
地上に出た途端、甘い香りに頬を撫でられて泣きそうになった。

もう金木犀の季節も終わりだろうかと思っていたから、不意打ちで嬉しかった。
夏の、花火のような空気から、秋の涼しく透き通った風になるまで
さほど時間はかからなかった気がする。

こんな速さで冬の匂いもやってくるのだと考えると、少々憂うつだ。
太陽が減り、温度のないコンクリートの中に一日中いると、正常に機能できなくなる。
肌や脳や筋肉や、おそらく毛細血管までもが、きっと。

冬は、布団にくるまったまま、ひなたぼっこをしながらウトウトするのが良い。

春は、肩の力を抜いた桜の散るを見ながら、草団子片手に友人と笑い合うの
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