ひとつ ほとり/木立 悟
風のなかを
風になれない音がすぎる
到かない光が
夜を見ている
凍った川のむこう
動かない夜
音のいちばん熱いところ
炎の奥に鳴り響くもの
姿のうしろに姿が織られ
曇へ曇へ遠のいてゆく
雨を呼ぶ声
応える声
光が光に振られ
まばゆい跡なく 次のものとなり
のどの痛み 目覚め 目覚め
あきらめとともに 肌色 目覚め
枝のひとつひとつが夜になり
夜空の明るさを隠している
細やかな生と死が
地と水を照らしている
明かりの背から
闇のふくらみから少し離れる
わずかな雨音
平らな音
新たな緑を
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