ロボット/佐倉 潮
 
いて。
 ロボットはそれが演繹可能なものか、帰納法により
導かれるものか、分からなかった。レターを掴むちか
らが、卵を掴むちからと同じくらいとは知っていたけ
れど、ラヴを掴むちからが、バイロンのちからで足り
るかどうかは、分からずにいた。ロボットはおかしな
ことに彼女を愛しているかどうかも、分からなかった。
 
 ロボットはいつでも、自分は愛を見つけられないと
考えていた。ちょうどこのバレーボールコートくらい
な大きさの芝生のどこにも彼女はいないように。愛は
ないのだった。あるとすれば、それは母屋の部屋のな
か。あるいはバイロンの言葉のなか。(だとしたら、
もしや彼女が、
[次のページ]
戻る   Point(3)