あるアパートで/番田
私の陰影の形状はどこに行ったのだろうかと
色彩を私は そこで見てはいなかった
目を流れているかのような 錯覚を見ていた
その霞む音階のひとつにも 指先で触れようとしてもいた
切り取ってもいた その青色の漂う空気を手中にさせられてもいた
暗い雨の降る日でも 輝くような晴れの日であっても
*
私は笛の高い音色を聴いてはいなかったのだ
柵の向こうを流されてもいった 風上の内側を
音楽の 音響の 夢の中心を通り過ぎさせられてはいったのだけれど
口笛の奏でさせられたときの 唇の音域としての
空気の向こうに放たれたかのような形状に 私は雲を望んだのだ
だが 午後を遡
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