キス/吉岡ペペロ
ふたりでぼくの追憶を旅した
おりた駅はさまがわりしていて
33年まえの町並みは
もう少し長かった
もう少し広かった
ぼくが大きくなったのだろう
記憶も比例していたのだろう
でも現実の町並みは
サイズだけ変わらずにいたようだ
豆腐屋や魚屋や散髪屋さんはまだあった
パン屋や八百屋やスポーツ用品店はもうなかった
小学校はそのままだった
警備のひとがたっていたから
なかをのぞいただけだった
図書館ではふつうに時間をすごした
彼女が大好きだったという絵本を読んでくれた
さいごのページをめくって
やぶれてんの
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