ばらの花/nm6
 
緑のガムはきっと青りんごとメロンの中間の味がするはずで
暗くてひんやりと寂しい箱の中に丸まって収まっているそれを
売る駄菓子屋のおばあさんは30年間涼しげな家の畳と続いたすみっこに
座っていたらいつのまにか赤い座椅子になってしまったと聞いていた

これからどこへ出かけるのですかと聞いてみたら
明日には分かるけど今日はおめかししなきゃいけないのよと
みじかい笑顔が溶けるようにするりと焼きついて目の奥が甘酸っぱくなった
赤い着物には池があって錦鯉がけだるそうに踊っていた

あれはきっとそうだったのだろう
私が踏んづけてしまった
そうして偶然はこの世界に確率以上の確率でやってきて
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