木漏れ日のひと/恋月 ぴの
真っ直ぐな道は歩きづらい
かと言って迷路みたいでも困るのだけど
適度に曲がりくねっていて
ちょうど昔ながらの畦道のように
赤い帽子によだれかけしたお地蔵さんが祀られているとか
時には肥だめみたいのもあって
わざと落ちそうな仕草で笑かしてくれる
そんな道は懐かしさと片付けられてしまいがちだけど
歩き疲れた心にも優しげで
解けた靴紐直そうとかがんだ先にはどんぐりの実ひとつ
かさこそと折り重なる葉陰からこちらの様子を伺っているようで
ひょいと跨いだら先を急ぐふりなどしてみた
緩斜面を回り込むとやがて小さな集落に出会う
ひと気の無い閑静な家並みとお役所仕事らしい真っ直
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