ナルシス・ナルシス・/リンネ
さて、どうやら人々はひどく急いでいるようである。こんな瓶の中でいったい何を急ぐ必要があるのだろうか。誰も立ち止まる気配を見せない。ともかく、誰もがせかせかと動き回っているので、なんとなく活気のある風景ではある。――それにしても、瓶の中に人が住んでいるなんて!
Nは、そのことに驚くというより、どことなく不安だった。しかし、途方に暮れる思いに陥りながらも、彼はその不可思議な瓶の観察を続けている。
なるほど、いくら瓶の中とはいえ、これだけのスペースがあれば何らかの動きは取れそうである。誰かがこうするというとき、どこかにこうしないという人が現れる。このとき一方の人の動きに隠れて
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)