小さな正義/……とある蛙
多くのスクウェアな図柄に囲まれて
負債を踏み倒しに行く
老獪な白熊一頭
笑顔には愛嬌
獲物を貪り喰らう凶暴さは健在
整った図柄の中央に
消えつつあるアルファベット
三文字
踏み倒さなくとも
借りはスクウェアの中空に
吸い込まれ消えて行く
返済に回すはずの原資は
あらかた白熊の胃袋の中
それが良いとか悪いとか
雲形定規で設計されていない
スクウェアな図柄の中で
忽然と消えて行くアルファベット
三文字
踏み越えなければ
ッっと思いつつ白熊は
屍にはならず、ほくそ笑む
油断している餌達に向かって
突然咆哮する咆哮する咆哮する
そして息絶えたのだが、
その死体の発する臭いは
ほとんどの正義を腐らせた。
腐った臭いが正義だと勘違いしている
溝鼠どもが崩れかかったスクウェアで
狂喜乱舞の世界
錫杖を持った観音の
見下ろす先に
腐った臭いの好きな
小動物の狂喜乱舞の世界
夏の足跡、秋の気配
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