朝の詩/ヒヤシンス
レースのカーテン越し
うっすらレモン色の光が滑り込む
この横浜の匂いのする応接間に優しく奏でられるドビュッシーの調べ
朝の透き通った空間にピアノの一音一音が踊り、新しい一日の始まりを祝福する
今日という日への願い、そして祈り
窓の外、手入れのゆき届いた庭に季節の移ろいを見る
そう、季節は移ろう、人の心も
時間の概念、思い出の概念は奪われただ存在する変わらぬものの尊厳まで奪うというのか、いや奪うべきではない、奪われてはならない
悠久の遥かむかしを想うのは夕暮れ時の領分だった
今はただ、応接間に漂うピアノの音とカーテンを優しく揺らす爽やかな微風、今はもう白くなった光の帯に我が身を委ねよう
横浜の朝の庭では金木犀が仄かに香る
戻る 編 削 Point(1)