海亀/天野茂典
 
  いっせいはいだして海へ
  波打ち際へ
  帰ってゆく姿は感動的である
  
  母の胎は宇宙だ
  いくつもの隠しだまをもっている
  月もそのひとつである

  海亀の産卵から紡がれるおおくの詩たち
  苦しみの
  喜びの
  涙をながしながら
  やはり海へ帰ってゆくのだ
  母なる海へ 月夜はそれを照らすこともない

  極めて孤独な分娩領域にひきこもって
  いまでも潮のいい匂いがする 海亀よ



         2004・10・21

戻る   Point(2)