Don't Let Me Down/ホロウ・シカエルボク
 






剃刀を敷き詰めた絨毯に彼女は寝っ転がって
「私の血液で刃先がだんだんと優しくなる」と
天使みたいな笑顔で笑う
それから俺にそんな顔をしないでと言う
「これで死んだりすることはないの、何度もやってるから分かってるの」
瞳の中には恍惚も狂気もなく
ただただ正気な輝きだけがある
「ノーマルの定義は人それぞれでしょ」と
彼女はよく俺に話す
「私はこうすることで要らない私を削ぎ落とすのよ」
「脱皮ってことよ、私は脱皮が出来るのよ」
「それは許されているの」
と彼女は言う
「慣れない」と俺は答える
「何度見ても慣れない、君のその姿
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