Queeeeen/salco
 
り出
血多量や蜂毒で頓死しても、自責や悔悟の気遣いには及ばない。



「あれまあ、あれまあ、何ておかわいいんでしょう。利かん気の、かしこ
いかしこいご尊顔だこと」
 赤ん坊を扶育大官から抱き取った、真新しい茶色の仕着せを着た乳母は
呟いて、陶然と腕の中を見下ろした。気難しい瞑目の王子は口をもぐもぐ
動かし、乾いた唇の端からきれいな涎をのぞかせている。

 まるで夢の中にいるようだ、とても信じられない。ただ乳の出がよいと
いうだけで、自分がこんな栄誉にあずかるなんて。
 産の時期が合わずに乳が涸れ、離乳の子を引きはがされて、気に染まぬ
亭主と顔をつきあわせるだけの毎日を
[次のページ]
戻る   Point(0)