白い白い土蔵のなかで/吉岡ペペロ
伊藤くんがなにかべつの存在に入れ代わっていた
双眸にうかんだ青い月影
柔和に引きつれた微笑にそれが凄絶をあたえている
土蔵の板窓が震えているのは僕のふるえでも風で起こったものでもなかった
きょう伊藤くんは帰り道
ぼくはたたかうことにするよ、と言ったのだった
新見たちとか、
とつぜんの伊藤くんの宣言に僕ははっきりと困った
ちがうよ、
え、だれとたたかうの、
伊藤くんは肩をぐらつかせながら僕のほうを見やって
石川くんは心配することないよ、と言って、ごめんね、そう照れ臭そうな顔をした
伊藤くんはまるでたたかうような気質のひとではなか
[次のページ]
戻る 編 削 Point(5)