椅子が記号になるために/乾 加津也
め
おおらかなしくみ、新緑に、またいで
すわる、わたしは井戸の深淵、喉ぼとけからするすると汲みあげる水脈、すみれの根先によりそいのびひろがる、冷たさの気配、季節風がくると、嵐の海溝、ゆきばをうしなう低気圧の狂乱が雷(いかずち)をよびさまし、おろす手桶は華奢でちいさく、こきざみにおびえるから、雲間の陽光であたためて、罅(ひび)にはヤニの軟膏を
擬似を、だく
葬りかたは、しらず
わたつみのみぎわ、ずぶずぶしずむ椅子の脚先、とおく、あかく、目をはらす、防波堤にたたきつけ、られる鴉を、吐きだせない、死がみちる玩具など、ない、背負えない、わたしのさしのばす指先からうずまき巣食
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