K先生の狂詩曲/吉岡ペペロ
 
ぼくは良家の息子の匂いをぷんぷんとさせている

K先生に新しい患者さんに間違われても

おまえと平気にインドまでゆくような男だから

百一匹わんちゃんが連れられている夕方の街路樹

おまえはちいさなやわらかな声で婦人に挨拶をする

K先生のところにはもう

その患者さんは訪れたのだろうか

貸し切りまえのインドのまえの道端には

店内の椅子という椅子が積み上げられていた

ぼくは良家の息子の匂いをぷんぷんとさせて交渉する

そして貸し切りまえのインドを貸し切りにさせる

いちばんの特等席におまえを座らせる

K先生は新しい患者さんの治療をもう

とっくの昔に開始していたに違いない、そう思った




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