地中の蜘蛛/海里
砂漠ですから砂の岸辺
いろいろなものが
打ち上げられもするのです
特に砂嵐のあとや
遠くの土地での季節の豪雨が
泥水の大海嘯を送り込んできた後などには
紙の本は水には弱い
水のみならず
湿気にも乾燥にも砂そのものにも弱い
けれども一緒に見つかったりもするのです
ギターンジャリや
梁塵秘抄や
内在への誘いや頓知の叡智
どこか砂の底に
アリジゴクに丸呑みされた図書館があって
誰かが
そこから
送り出して来ているのかとも思います
古、ガラス瓶に手紙を詰めて
海に投げ込んだ習慣のように
由緒正しくは無人島から
のちの時代には
ただ夢の試みとして
そんな風に、本を
そんな風に、本が
「砂漠の中の砂時計」より。
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