夜とふたつ/木立 悟
 





足踏みの音が
空を動く
少し傾いだ
輪を描く


ふたつの流れ
ふたつの海にたどりつき
海になれぬまま
海を巡る


誰も居ぬ部屋
明かりだけが
明かりを見ている
鏡のなかの 自身を見ている


まばたきのない
まばたきの夜
白になぞられゆくかたち
通りに満ちる 見知らぬかたち


月を見すぎた
窓の左目
痛みと 痛みを映した滴
未明へ未明へこぼれゆくもの


二重三重四重五重
曲線につけられる名としての虹
重さの無いものがたどる路
進む色 こぼれる色を受ける手のひら


うろこ 光
ひらく水音
刺さる
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