遠視/瀬崎 虎彦
も
愛されるための
美しい顔
人目につかぬところで
静かに息を引き取る
歩き方で分かるという
体内のナトリウムの濃度で
分かるという
分かってたまるか
私からこぼれる
なにか不道徳なにおいのする
粘性の高い苦痛が
微笑と手に手をとって
走り出す
鳥ではない
獅子ではもちろんない
なにか別のものになりたいと
思ったことは
一度としてなかった
ただ
皆と同じになりたかった
切実にそう願った
何が違うのだろう
なぜ違うのだろう
違うことが個性だとか
そういうことではなく
同じように接してもらいたい
融解した金属の
腐乱した筋肉の
瓦解する骨格の
蒸散する血液の
その内奥にいる
まぎれもない私
獅子ではない
鳥ではもちろんない
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