遠視/瀬崎 虎彦
果てる
潮の流れの中で
常温で融解する
金属の雌蕊
見紛う それから
手を差し伸べるように
突き放す
レインコートのひらりひらりと
美しい顔をなでる
レース
この少年の不在
そこにいる人なのか
あるいは死に際で
みすぼらしい姿を
さらけ出す何者か
金色の鬣
破れた羽
獅子ではない
鳥ではもちろんない
うなるように山を駆け下りて
人間を蹂躙したい
自分は何か別のものであるという
衝動を抱いたことはない
皆と同じでありたいと
願ったことしか
切実に願ったことしか
今は思い出せない
美しい顔を
撫でるレース
誰からも
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