そしてまた、得体のしれない色を壁面に塗りつけるために/ホロウ・シカエルボク
考えなくていいのだ、生きている限り、もうそこに浮かぶことはない、ただひとつ―なにもかも諦めて匙を投げたなら、生きたまままた水面に顔を出すことが出来るのだろうけど―そんなことをしたらもうきっとどんなことだって、水面の高さでしか計ることが出来なくなるだけさ、俺は時々海中で放電する、放たれた電流は周囲をほのかに発光させる、迂闊な深海魚たちが目をくらませて動けなくなるくらいの光、俺はその中心にいて考える、この光は、いつまで、どこまでを照らすことが出来るのだろうと…限界のことを考えれば恐怖になる、それが来る前にすべてを閉じてしまおうかなんて考えたりする、もうなにも出来なくなった自分を知るくらいならその前にこの流れを断ち切ってしまおうと…だけどもうそんな考えに乗っかることなど出来るわけもなく―だって俺は約束を交わしてしまったから、先に息絶えてしまった愛くるしい天使たちと…俺はもう一度ゆっくりと沈み始める、底を見てとることの出来ない海中での降下は、まるで遥か上空から落下しているみたいだと俺は思う…
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