生まれる所/砂木
 


父母と共に 林檎の木にはしごをたて登り
陽があたるように 赤く熟すように
もう出ている 来年の花芽を摘まないように
実にかかる葉をのぞいたら くいっと回して
枝の痕の青い所にも陽があたるようにする

日暮れがせまり 畑が薄暗くなりかかると
父母が言う
あの明るい方へ行け
木々の中でも 風通りの良い方へ
空の見える方へ

おかえり なさい ただ いま
捨てられないもののために
実を 陽に あてる
両手を添えて


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