時計女と妊婦さんたち/吉岡ペペロ
 
鍾乳洞のような碧がうまれるまで

洞窟のなかでふたり

じっと性的なリズムを聴いていた

ほほ笑みがこぼれあふれ

愛液がみたされるのをいたわり、温めてくれるひと

精神をこすりつけた

からだをなすりつけた

ずっとふれていたいと思った

時間を気にしながら

楽しそうに悲しがったり

残念そうに喜んだり

町じゅうの妊婦さんたちは

それが決まりごとのように大事にされていた

それが癖であるかのように大事にされていた

そんなときだ、時計女があらわれたのは

その日は最後に駅舎でだった

ケイタイで誰かと待ち合わせをしながら

あたしたちの前を巡回していた

妊婦さんたちのように大事にされよう

大事にするひとがそうするように

そうするようにあたしも彼を大事にしよう

時計女がはやくもにしゅうめに入った

それを合図にあたしは彼を釈放した




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