秋の日の女/はだいろ
ても部屋を借りる初期費用が足りないのを、
自分もネットカフェ生活をしたことがあるという不動産屋のお兄ちゃんが、
助けてくれて、
やっと、部屋を借りられたとき、
ぼくはこころのそこから、
ホッとした。
こんな、遊んでるお金があるのだから、
貸してあげたくなってしまった。
なんだか息苦しくなった。
生活、それは厳しい。
幸せ、そしてそれは、誰の肩にとまるかわからない蝶々のようだ。
ぼくの肩には蝶々はいないし、
来た女の子は、
そりゃさすがに可愛かったし、
いちゃいちゃキスもたくさんできたけれど、
恋におちるには、
時間が足りなかった。
いや・・・
足りなかったのは、もっとほかの、何かなのかもしれない。
それがなんなのか、
ぼくにはずっとわからない。
明日は朝から大雨だって、
その子が教えてくれた。
手をつないで、
エレベーターの中でキスをした。
帰ってカレーをつくろう。
逃避している雨ざらしの現実のなかに、
幸せの萌芽は、
明日、
見えるだろうか。
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