駅・上郡/たりぽん(大理 奔)
 
そのまま東へ進めば
青春時代を過ごした街まで
たどり着くのだろうけど
特急が進行方向を変えたら
あの北の雲の先に
私の帰る場所がある

中途半端に古ぼけた駅舎の
売店はもう閉まっている土曜の午後
人もまばらなプラットホームで
二両編成の特急スーパーいなば
車掌と運転手が慌ただしく交代して

低く唸るディーゼルエンジン
生温かな輻射熱に汗ばむ
自分で決めた行き先なのに
なにかにゆだねたような
焦燥感でのどが渇く

そうか
いつだって渇いていたな
だから
寒く湿った波の先を
ずっと防波堤で見ていたのだったね
文字だけになってしまったいまでも

「こっちはもう寒いから、なにか羽織ってきてね」

私はどこに帰るのだろうね
車内アナウンスを車窓の遠くにききながら
私はどこにかえるのだろうね

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