百葉箱の怪/海里
 
校庭の隅っこで
秋風に吹かれて
あれは百葉箱
百片の言の葉を入れておく白い箱

言葉なんて
目に見えるものではないから
留め金をそっと外して開けてみても
なかは空っぽだ

ほんとはほら
赤い水銀の寒暖計がぽつねんと1本
それが主人公

でもそんなこと知らないこどもたちは
なんとなくそっと
小さな物を置き足してみたりするんだよね

砂場で見つけた貝殻
時計樹の果実
一束の人魂
草木四方山話

毎年大晦日
夜明け前に年神様がやって来て
のぞきこんで行く
いつもならふっと笑って立ち去るだけだけど

いつか本当に何かが宿るよ
百葉箱
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