百葉箱の怪/海里
校庭の隅っこで
秋風に吹かれて
あれは百葉箱
百片の言の葉を入れておく白い箱
言葉なんて
目に見えるものではないから
留め金をそっと外して開けてみても
なかは空っぽだ
ほんとはほら
赤い水銀の寒暖計がぽつねんと1本
それが主人公
でもそんなこと知らないこどもたちは
なんとなくそっと
小さな物を置き足してみたりするんだよね
砂場で見つけた貝殻
時計樹の果実
一束の人魂
草木四方山話
毎年大晦日
夜明け前に年神様がやって来て
のぞきこんで行く
いつもならふっと笑って立ち去るだけだけど
いつか本当に何かが宿るよ
百葉箱
戻る 編 削 Point(2)