地下鉄/
たもつ
椅子だけが敷き詰められた
簡素な地下鉄の空間を
カラスアゲハが飛ぶ
必然にも良く似たその羽で
運転席のピッチャーは
キャッチャーのサインに首を振り続ける
投げられないのだ
とっくに肩を壊してしまったから
網棚の上に古びた日記帳のようなもの
最初のページの一行目に記された
唯一の文字 ー 空腹
地下鉄の薄暗がりで爪を切る
いつしか爪以外のところを切っている
間もなく都心に到着するらしい
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