渋谷の喫茶にて/番田 
 
夜の街角には見知らぬ何者かがいないものだろうかと
ぼんやりと私は一人 非常に古ぼけたアパートの部屋の隅っこで、
ぼんやりと一人で日が暮れるまで立ち尽くしていたのかもしれない
そのラジオから 今日も流れ出されてくる装飾されたいくつもの音楽の中で 
独身の私は一人でぼんやりと聴かされ続けている
その一室で いつまでも いつまでも 聴かされ続けている  
身のかじかむ渋谷の冷たい風のどこかへと流されて行く私は
表参道の冷たいサラリーマンの視線の中を走り抜けて行く
ぼんやりと無数に中を歩いて抜けて行く二人連れになったカップルたちの通りで
オレンジ色のカラフルな傘を捧げた人たちと一緒になっ
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