夜と辺/木立 悟
 




実のつらなりが
水に映る
逆さになり
雨が来る


遠くと近くの震えが混ざり
小さな 音だけの雨となり
曇へ降る虹
曇から降る虹を見つめる


指のかたちの熱が触れる
水が離れた水を洗う
一度きりのものをもとめて
熱は幾度もかたちをなぞる


見える蜘蛛と見えぬ蜘蛛
互いの空を紡ぎあう
秋に狩られ
冬に狩られる


選択が
光の波に押し寄せる
閉ざしても閉ざしても
押し寄せる


流れぬ水を聴いている
自身の向こうの向こうを見ている
樹は
けして近づかない


やわらかなものに息を吹き込む
銀は銀に従ってゆく
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