名前/
たもつ
バッタの匂い、そして夕暮れ
船籍を持たない貨物船が
狭小な港に停泊している
たくさんの名前を積んで
名前に奪われた名前がある
名前を奪った名前がある
誰も知らないところでひっそりと
捨てられ、生まれてくる名前がある
区別するための記号でしかないのに
意味や願いなどがある
それはとても恥ずかしくて、尊い
私が私の名前を呼ぶ
私が坂道を駆け下りていく
私ひとりを置いてけぼりにして
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